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熊本県益城町近郊のお葬儀(お通夜・お葬式)に。

青木新門講演会

去る8月5日、納棺夫日記の著者である青木新門さんの講演会を聴講しました。

本木雅弘さんの発案で納棺夫日記を映像化しようとしていたら、
青木さんが伝えたかったものとは別のものになってしまったので、
原作としてクレジットするのはやめてほしいと青木さんから申し入れる事態になった話など、
割と知られた話ではあるのですが、著者本人の話には心念の強さが見られ、
かなりの説得力を感じました。

映画でも、中のエピソードなどは納棺夫日記から拾ってあるのですが、
一番外側にある大きなストーリーは、確かに全く別個のものであると僕も思います。

映画では宗教色をほぼ完全に省いてありますが(位牌が出てくるくらいかな)
青木新門は宗教をとても大事にしています。

【宗教】といっても、特定の宗教団体に所属しているかではなく、
言い換えれば、先程挙げた【一番外側にある大きなストーリー】のことです。
青木さんは浄土真宗の視点で書き進めてありますが、
他宗にも同じような視点で展開できる物語はあると思います。


【以下映画のネタバレあり】


 

映画では、ラストで父親の納棺をします。
青木さんは脚本を読んだときに、
この部分を、父親がまだ生きているという設定にしておいて、
主人公・大悟の前で逝くように直すことが出来ないだろうかと提案したそうです。

仏教では生と死を完全に分割して考えません。
【生死】と書いて【しょうじ】と読みますが、
(僕の理解で書きますので正しいかどうかはわかりませんが)
生まれたからには死ぬことが確定しているわけで、
それらは例えば同じ紙の裏と表みたいにセットになってるものなので、
セパレートするのはイケてないよということです。

映画では【旅立ちのお手伝い】というフレーズもありました。
つまり、亡き人は生きている人とは隔絶された世界へ【旅立つ】ことになります。
火葬場の職員が「また会おうの。」と声を掛けますが、
また会う世界は「あちら側」です。

青木さんが語りたかったのは、生と死の境目のことなのではないかと思います。
瞳孔が散大するとか脈が無くなるとか脳が活動しないとかそういう話ではなくて、
さっきまで生きていた人が、今死んでいるという、その「まるごと」です。

青木さんの提案は却下されました。
それがつまり、「生と死の世界」をそのまま伝えようとした「納棺夫日記」と、
「生の世界から死の世界と関わろうとする」「おくりびと」との境目で、
他にも様々な相違点はあったようですが、これが決定的だったんだろうと想像します。

「いのちのバトンタッチ」

人は必ず死ぬのだから
いのちのバトンタッチがあるのです

死に臨んで先に往く人が
「ありがとう」と云えば
残る人が
「ありがとう」と応える
そんなバトンタッチがあるのです

死から目をそむけている人は
見そこなうかもしれませんが
目と目で交わす一瞬の
いのちのバトンタッチがあるのです


shinmonの窓より。

葬儀業界も色々と様変わりしていますが、
どのような新しい形態が生みだされたとしても、
「ここだけは変わらんよ」という根っこの部分になり得るのは、
こういうものなのではなかろうかと思います。

「自分」と「自分でないもの」みたいに
継承する中で分かれきれないものや、

「親しい人」と「親しくない人」みたいに
共生する中で分かれきれないものもありつつ、

お別れですと云いながら、
別れきれないものがあったりするのではないでしょうか。

知識は本を捲れば身につきますし、
テクニックも大体そうなんですが、
息づかいとか温度とか空気の色とか、その場の体感は、
大事にしないと段々鈍感になって失うばかりの気がします。

もうなんだか僕の言葉では色々と足りないんですが、
僕はこれからも「死」というよく訳のわからないものと否応なしにお付き合いしていくんですけれども、
死者も生者も引っくるめて、色んな人たちと出会う中で、
何かしら気付かされるものを大事にしつつ、
あまり「あっち」と「こっち」を分けずに
世界を広げて行けたらと、そんなことを考える次第です。

青木さんは「おくりびと」をとても誉めていました。
ただ、「自分の書いたのと違う」ということらしいです。
これで原作クレジット放棄するんだからすごいですよ。

ということで、講演の後は控え室にお邪魔して、
サインをしてもらい、握手してもらいました。

青木新門はとても大きな世界を持っていました。
本の中に表れているそのままでした。

「納棺夫日記」未読の方は、是非読んでみて下さい。

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